2022/11/15
私の台所
私たちに設計のご相談があると、 台所や洗面所の家具は設計させてほしいことをお話しします。理由は、システムキッチンなどを導入するとその場がショールームのようで他の空間とは異質な雰囲気になってしまうからです。
台所はオープンなとき、個室になるとき、 家ごとに作り方が変わります。それは、周囲の環境や使い手の好みや様々な理由からですが、他の部屋の仕上と合わせたり、コントラストを付けたりと考えながら、その家らしい味になっていくと考えています。特に建具と家具の面材を合わせると、建築全体をまとまりのある表情につくり込むことができます。そのために建具と同じ材を家具屋さんにも使ってもらったり(その逆だったり)します。ここに、他から持ち込まれる「塊」があると居心地の悪いものになってしまうのです。
実は、住宅の設計を長く続けてきたのは、台所や洗面所などの設えを考えることが面白かったとも言えます。自分自身 食べること、 料理することが好きだし、家具の使い勝手が良いと得した気分になったからだと思っています。
私が設計事務所で働き始めたころは、台所を設計する事務所は少なくてキッチンメーカーを選定することが「設計」の手順だったと思います。
そんな中、学生のころアルバイトしていた吉村順三設計事務所のスタッフキッチンを見て、気持ちが落ち着いたのを覚えています。それは、 空間に合った大きさ、カウンターの材質や扉の引手に至るまで、その場にふさわしく「行き過ぎない」印象がありました。何気なく、さりげなく隅々まで手を抜かず、できていることを目の当たりにしました。 高級車を買うような輸入キッチンはちょうどこの頃台頭し始めました。
その後レミングハウスに入社し、大久保事務所の台所に手を加えたのを初めに、台所設計も始まりました。最初の現場では、換気扇フードを設計したものの穴あけすることを書いておらず(現場に品物が入るまで気づかなかった)慌てたことを覚えています。
中富の家(自邸)でようやく自分の台所を持てることになりましたが、すでにコロナ、ウッドショック、ウクライナ戦争と続き、長く使ってきたタモ材が使えず(今までの1.5倍~になった)その時に手に入ったナラ材を使いました。
手元が隠れるセミオープンタイプの台所です。ちょっと違っているのは端が平たくなっていること。ここでパンをこねたり、配膳したりします。
次回は収納の中身、食器棚についてご紹介したいと思います。