2019/12/18
茂庵のガラス
京都・祇王寺を訪れたあと、昼食を取ろうということになり、面白いカフェがあるんです、と関西在住の友人が「茂庵」へ案内してくれた。
茂庵は、京都大学の東、吉田山という高さ105mほどの小山の山頂にある。谷川茂次郎と言う実業家がこの吉田山一体を所有し、大正末期から昭和初期にかけて「茶苑」として築いた施設のひとつ-食堂-がこのカフェの前身だそうだ。市中の山居を目指したとあるだけに、ここへたどり着くにはちょっとしたトレッキングになる。「市中の山居」とは、日常の中に非日常の空間を取り込み、その空間と時間を楽しむという、茶の湯用語だそうだ。
神楽岡通りからの茂庵への道中、平屋や2階屋で軒の揃った、しもたやと言うのか、昭和初期のままかと思う家々が建っていた。
ここも谷川氏の「開発」だったようで、分譲とせず貸していたというのも、この一体が乱雑に景観を変えられてしまうのを嫌ったからなのかもしれない。 おのおのの家からは、五山送り火の大文字山が見えるように建てられている。
格子窓の並ぶカフェ2階の席からは、愛宕神社の総本社のある愛宕山が望める。
ガラスの格子窓を観ていたら、日光にあるイタリヤ大使館別荘を思い出した。中禅寺湖畔に建つレーモンド設計のこの建物は昭和3年に建てられており、やはり、ゆがんだガラスがふんだんに使われている。
世界大恐慌直前、粋のわかる大人の時代があったのかもしれない。