2019/11/08
大谷さん
家づくりには、いろいろな職人さんが関わります。中でも私たちは、家具屋さんと密に仕事をしてきましたが、他にも気になっていた工種があります。屋根の板金工事です。
最近は屋根をガルバリウム鋼板 立平葺き(緩勾配の屋根に向き、廉価で安心)にすることが多いのですが、嵌合式は使わないので軒先の納まりは既成のキャップで納めるのではなく、折り倒して掴んでもらうことを基本にしています。
先日、東松山の家の屋根工事を担った、吉見スレート工業の大谷さんを訪ねました。このはぜの施工方法を他の現場の職人さんにも伝えたくてレクチャーをお願いしたのです。 大谷さんは、東松山の現場での仕事ぶりに私たちが信頼を寄せている方です。
しかし、その説明以上に、美しく整理された工場内や置かれた集水器や水差しに目を奪われました。
板金には、建築板金技能士(1級から3級まで)と言う国家試験があるそうで、1級の試験の実技では 5時間の間に課題の製品の製作用図面(展開図)を書き、板を切り出し、曲げ、はんだ付けし完成させるそうです。
実際に鋼板を使って説明してくれる大谷さん。 大谷さんも1級技能士だそうです。
出来上がったものは、まさに工芸品です。
私が仕事を始めた頃作ってもらっていた集水器や軒樋端部の菊絞りなどは、こうした3次曲面も駆使した技術の蓄積があってこそだったのだと感動しました。
大谷さんは他にも ハゼの納め方を実演してくださり、「結局は作る人が美しく、風や雨仕舞に強い仕事をするんだ」と言う気持ちしだいだと思うんですよ、と話してくれました。
日本のものづくりの矜持を目の当たりにした瞬間だったと思います。